膝の痛み 治し方

不安定な膝をベルトで安定化

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ハムウォーキング

キーワードのひとつが、「剪断力」。
 
剪断力は、関節の動揺性に関係するんです。
 

 膝の痛みに関連して、ハムウォーキングという方法を紹介します。膝の痛みを少なくするには、筋肉をうまく使って安定性を増すことが必要であり、すなわち筋肉のコルセットを作って安定させるとよいというお話をしました。この筋肉のコルセット機能を簡単に高めていく方法が、ハムウォーキングです。
 関節の動揺性と痛みの関係は、餅つきの第一工程に似ています。今では、餅つきをする家は少なくなったかもしれませんが、餅つきの第一工程では、蒸かした餅米をつぶすという作業をします。蒸かしたままの状態で、杵で上からたたくと、米が臼からはねて飛び散ってしまうので、半分餅になったような状態になるまで、杵と臼をすりこぎのように使ってつぶします。餅米をつぶすためには、杵の頭を持って、餅米を上から押さえつけ、横に滑らせるようにします。これを、専門用語では剪断力といいますが、上から力をかけ、力と垂直方向に杵を滑らすことによって、強いすりつぶす力が発生します。
 膝も同じで、体重を支えるときに、腿の骨と脛の骨にまっすぐ力がかかっているときには、関節軟骨は傷つきません。しかし、力がかかった状態で腿と脛の骨が前後、左右にずれると剪断力となって関節軟骨を傷つけてしまいます。関節の固定性が高いと、前後左右にずれることは少ないのですが、関節を支える靭帯などが緩くなって動揺性が高くなると、前後左右に滑って、関節軟骨を壊す剪断力になってしまいます。(『健康寿命の延ばし方』p88~p89)

 

ハムウォーキングの「ハム」は、ハムストリングスの「ハム」。
 

 歩くときには、大腿四頭筋と呼ばれる腿の筋肉が活躍します(図24)。この筋肉は膝の前の方について膝を伸ばす(突っ張る)作用を持ちますが、同時に、この筋肉が活動すると膝を前の方に引っ張る、すなわち前方の関節の動揺を引き出してしまうという作用があります。これを前に引っ張られすぎないように、後ろから支えるのが腿の後ろにある、ハムストリングスです。大腿四頭筋とハムストリングスは、お互いに措抗して働く筋肉で、これが同時に働くことによって剪断力が減ります。歩くときには、前側の大腿四頭筋を主動作筋、そして、後側のハムストリングを措抗筋と呼びますが、どのような関節でも、措抗する力となる、ペアの筋肉から成り立っています。たとえば、肩関節でいえば、上腕骨を前に引っ張る大胸筋と後ろから引っ張る小円筋などが措抗して働いています。この措抗する筋肉を同時に働かせることが、剪断力を減じ、関節の安定性を高めます。
 大腿四頭筋は、足を前に振り出して、かかとが地面につくときに強く働きます。足には体重が一気にかかりますので、このときが、膝への荷重が最大となります。最も体重がかかっているときに、大腿四頭筋が働くのですから、膝を伸ばして足を支えるとともに、脛の骨を前方に引っ張って、剪断力を引き起こす力にもなってしまいます。この剪断力を緩衝するには、これと同じタイミングでハムストリングスを働かせて、脛の骨を後方に引っ張り、前に引っ張る大腿四頭筋の力と措抗するようにすれば、剪断力を減らすことができます。
 ハムストリングスは調整役の筋肉なので、通常は意識に働かせることがむずかしい傾向にあります。少なくともかかとをつくときに、ハムストリングスを同時に緊張させましょう、といっても、自然にできる人はいないでしょう。やや膝を曲げて雪山で雪をこぐように歩くと、ハムストリングスを大腿四頭筋に上手に措抗させて活動させることができます。歩くときは足首の関節を使いますが、ハムストリングスを働かせるためには、なるべく足首の関節を使わないで、漕ぐように歩く様子をイメージしてください。あるいは、凍った道路の上をできるだけ速く歩こうとするときにも、ハムストリングスの活動が高まります。
 しかし、よりイメージして、確実に習得してもらうために、私は、足首におもりを巻いて歩くという方法を考えました。足首におもりを巻いていると自然とハムストリングスが、必要なタイミングで活動するようになります。あまり軽いおもりだとハムストリングスの活動効果が小さいのですが、やや足梅になる程度(男性で片足2キロ程度、女性で片足1・5キロ)のおもりを、足首に巻いて、しっかりと歩くようにすると、自然とハムストリングスの活動が高まります。
 膝の痛い方23名(平均年齢75歳)に集まっていただき、この方法を使って、3ヶ月間おもりを巻いて歩く、ハムウォーキングを実践していただきました。開始前、それから3ヶ月後にご自分の痛みを点数で評価してもらいましたが、結果、痛みの得点は平均7・3点から、3・5点と半減しました。
 たしかに、ハムウォーキングは、痛みが和らぐ運動ではあるのですが、闇雲に歩けばよいというわけではありません。歩く前後の関節の動きを確認しながら、歩いた後に関節がかたくならない程度の量を選んでいただくのがベストです。だいたいの目安は15分歩くところから始めるとよいでしょう。普段より痛みが少ないため、ついつい歩きすぎてしまう傾向があるので、最初は時間を計りながら、8分行って、同じ道を戻るというようにコントロールしながら実施します。実施頻度はおおむね、週3回、1日おきに実施するのを目安にします。(『健康寿命の延ばし方』p89~p93)

 

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